負け組アーキテクトの憂鬱

メモしておきたいことや読書の記録を淡々と書く。

[読書]Googleの正体4

Googleの正体 (マイコミ新書)Googleの正体 (マイコミ新書)
著者:牧野 武文
販売元:毎日コミュニケーションズ
発売日:2010-01-23
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

まず本書から読み取るべきことは、世間で言われるような、ChromeOS対Windows、Android対iPhoneといった安直な対立構図は誤った認識であるということだ。

Googleも営利企業である以上、当然営利活動を行っている。いわゆる常識的な枠組みで考えられる営利活動とちょっと毛色が違うだけの話だ。

個人向けに徹底的に無料のサービスを提供し、参入した市場で価格破壊を起こし続ける様は、確かに目的が分かりづらい側面がある。検索連動広告で稼いだカネを原資に、あらゆる市場を破壊し尽くしていくようにも見える。Googleにとっての営利活動は何か、Googleはどうやって金儲けをしているのか。そのシンプルな回答の一つが、ChromeOSやAndroidの開発と無償提供にある。

続きを読む

[読書]MySQL全機能バイブル ~現場で役立つAtoZ~3

MySQL全機能バイブル ~現場で役立つAtoZ~MySQL全機能バイブル ~現場で役立つAtoZ~
著者:鈴木 啓修
販売元:技術評論社
発売日:2009-09-29
クチコミを見る

MySQLの「紙のマニュアル」が欲しくて購入。その目的に十分な内容だった。

MySQLについてはwebだけでも一通りの情報がそろっている。一方で、そのサイトが前提としているバージョンが古かったり、そもそもの記載の信頼性に疑問符が付いたりと、目的の情報に辿り着くには案外時間と労力を費やさなければならない。もちろん公式のオンラインマニュアルも充実しているのでそこで調べるのが一番ではあるのだが。

全機能バイブルと言うくらいなので、MySQLにまつわる情報が体系的に纏まっていることに大きな価値がある。

数あるMySQLリファレンス本の中でこの本を選んだ理由は、特に前半のMySQL固有の内部構造や各機能の動作原理の基本的な解説が詳しかったからだ。単なるSQLリファレンスだけが載っている本とは違った趣向だ。また、前提バージョンは5.1.30と比較的新しい。MySQLは成長著しいプロダクトなので、バージョンが上がる度に新機能がどんどん追加される。旧バージョンの常識は新バージョンでは通用しないのだ。

SQLリファレンスであると同時に、比較的新しいバージョンの機能解説でもある。継続的な改版を期待したい。

[読書]「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト5

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)
著者:酒井穣
販売元:光文社
発売日:2010-01-16
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

フリービットには11月末までお世話になっていました。

当然のことながら、社外の立場に立って初めて気付くということは沢山ある。良いとか悪いではなく、引っくるめて社風というやつなんだろう。

あくまで個人的な見解になってしまうが、実際のところ酒井さんが入社され、数々の施策のお陰で現場の空気は確かに変わったと思う。特に実感出来たのは、第7章で紹介されている「道真公の愛」だ。同僚の書評を読むのはそれだけでも楽しい。感じ方は人それぞれなどと言うけれども、それを手っ取り早く実感できる手法でもある。そして、この道真公の愛のもう一つ凄いところは、購入補助金というインセンティブと、情報をアウトプットするスキルを身につけることのバランスが絶妙な事だ。

続きを読む

[読書]闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達5

闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達
著者:G・パスカル・ザカリー
販売元:日経BP社
発売日:2009-07-15
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

昔、下北沢でバイトしていた頃に確か当時の職場で見かけた本。おそらくWindows7発売に併せて再版されたんだと思う。

当時MS-DOSやOS/2を開発していたMicrosoftの次世代OSである、NT(Windows NT)の開発ドキュメント。デビット・カトラーを中心とした開発チームのドラマだ。

カトラーは今でも現役プログラマらしい。NT5.1ことWindows xpやNT6.0ことWindows Vistaのx64版には多大な貢献をしたというし、Windows Azureのスタッフ一覧にも名前があるという。本当に頭の下がる思いだ。また、目ざすべき人物なのは間違いない。

登場人物である開発者たちは狂信的に仕事をする。私生活を擲ってまでNTの開発に没頭する様子は、現代風の表現にすれば間違いなく「ブラック」だ(無論、後の大成功はあるわけだが)。そんなブラックな内容から、我々現代のエンジニアが学び取るべきことは何だろうか。劣悪な就労環境や、家庭を省みない態度への正当化ではない。一つは非凡への志向だろう。

第一章の最後にこんな言葉がある。「平凡は弱者のためにある」。これこそ本書全体に漂う狂気の原動力だ。そう信じなければいられないという、NT開発者のなんとも切ない想いだ。平凡である事を否定し、強者であり続けようとすること。もはや本能の領域の話である。誰もが持つ闘争本能を呼び起こすからこそ、邦題は「闘うプログラマー」なのだ。

思考が守りに入りそうな時に改めて読みたい一冊。

[読書]不完全性定理―数学的体系のあゆみ4

不完全性定理―数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫)不完全性定理―数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫)
著者:野崎 昭弘
販売元:筑摩書房
発売日:2006-05
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

当たり前の様に考えている数学の世界も、その論理体系の理解を問われるとなんだか有耶無耶になりがちだ。数学という論理そのものを論理で整理する、メタ数学の基本的な考え方から導入し、ゲーテルの不完全性定理をわかりやすく解説する。

正直言って、この不完全性定理をよく理解していなかった。この本のおかげでようやく大枠が理解できたんじゃないかと思う。

論理体系に限らず、メタな認識には独特の視点で物事を眺める能力が必要だ。大所高所からの鳥瞰というやつだ。自明であろう事柄をいかに疑うこと。そこから新しい筋道を見出すこと。ゲーテルは、閃きとパワーの人だ。

当たり前に見える物事に疑いの目を向けることの必要性は、それこそ当たり前のことのように言われている。物事をメタな視点で見る能力も必要だ。大局観を養うことでもあるし、分析能力やモデリング能力にも直結するだろうと思う。

ゲーテルになることは無理でも、彼のような人間がいたという事実を受け止め、志向する事はできる。違った視点で眺めて、徹底的に考え抜くこと。まずはこの辺から真似していきたいものだ。

[読書]思考する機械コンピュータ5

思考する機械コンピュータ (サイエンス・マスターズ)思考する機械コンピュータ (サイエンス・マスターズ)
著者:ダニエル ヒリス
販売元:草思社
発売日:2000-10
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

コンピュータの動作原理から人工知能まで。幅広い内容だが、徹底して論理の視点を貫いている。

コンピュータの本質は半導体などの技術論ではなく、いかに論理を組み立て実行するかということだ。ブール演算回路と有限状態機械の考え方さえ実現できればそれは半導体ではなくても、水でも、糸と棒でも構わない(実践してしまっている所が凄い)。そういった、コンピュータの基礎的な考え方を前半で述べ、後半はより人間的な「思考」に近づく概念である、チューリングのユニバーサルマシンや、ヒューリスティック、並列コンピューティング、学習といった考え方を説明する。

人間の思考は脳で行われている。人間の思考について、物理法則に支配される物質である脳からいかにして意識や心が生まれるのか根源的に問う心脳問題や、人間の脳をコンピュータ(ユニバーサルマシンとしてのコンピュータ)でエミュレーションすることによって、人間の思考の再現可能性を問うシンキングマシンの実現といった視点がある。

著者は、シンキングマシンは実現可能だがその原理は人間には理解できない、という見通しを立てた。その根拠は、彼自身が検証した進化論的シミュレーションで生成したソートプログラム(任意の数字列を順番通りに並べ替えるプログラム)と、従来型アルゴリズムのソートプログラムの比較にある。進化論型アプローチは、初期状態として基本的なソートアルゴリズムを与え、自らのアルゴリズムを変遷しながら効率の悪いアルゴリズムを淘汰し、よりよいアルゴリズムが残るように淘汰を続けて十分に質の高いアルゴリズムを得ようとする試みだ(人間の脳と同じアルゴリズムを生成するわけではないが、ある最適なアルゴリズムに収束するのではなく、発散と淘汰を繰り返すという、脳が歩んできた進化の道筋と「同じプロセス」であることが重要だ)。

驚くべき事に、この進化論的シミュレーションで生成されたソートプログラムは、他のどんなアルゴリズムを使った場合よりも高速な処理が可能であったという。さらに驚くべきことに、(いわば天才である)著者にも理解不可能な命令手順であったことだ。

この事実から、思考は計算可能であるものの、彼は進化の産物である脳の動作原理は根本的に人間には理解不能であるという仮説を立てた。シンキングマシンは実現可能だが、心脳問題は解けないと悟ってしまったのかもしれない。

計算可能性と思考の間には大きな断絶がある。脳を計算し尽くす道筋が立っても、そこに意識や心が生まれる第一原理は何も見いだせないのだ。

現在の物理法則においても、通常認識し得る物理法則と量子論が明らかにする物理法則の間に、まだ大きな分断が有るように感じる。本書では量子コンピュータの可能性についても触れられたが、論理と思考の間の分断は、この物理法則の分断と無関係ではないはずだという期待が生まれる。

いずれ量子コンピュータが実用化され、また量子論と相対論を結びつける統一場のような物理法則が発見出来たときには、心脳問題も解き明かされるのだろうか。

[読書]ビジネスマンの父より息子への30通の手紙5

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫
著者:G.キングスレイ ウォード
販売元:新潮社
発売日:1994-04-01
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

自分の跡継ぎである息子に当てた手紙の数々。入社してから父親が退職するまでの間の息子の成長の記録でもあり、父親がすべてのノウハウを託そうとしたビジネス指南書でもある。父親は二度も心臓の手術を行ったとのことなので、遺書としての一面もあったのだろう。

有益なビジネスノウハウと親子愛が同時に流れ込んでくるこの感覚は、なんとも形容しがたいものがある。苦楽を共にするとはまさにこういう事なのだろう。父親の偉大さとはどういう事か、その片鱗を垣間見た気がする。

果たしてこんな父親になれるだろうか。自分の仕事への卓越した知識・経験を身につける。それを伝える。褒めるべき所は褒め、叱るべき所を叱る。家族を思いやる気持ちと仕事への誇り。何事へも徹底した真摯さを持って向かうことなのだろうと感じる。

読んでいると自然と自分の父親の顔が目に浮かぶ。家族を支えるために仕事に生きた父親だ。自分も息子にとってそんな父親になれるだろうか。いや、ならなければいけないんだろうな。

[読書]あなたにもわかる相対性理論4

あなたにもわかる相対性理論 (PHPサイエンス・ワールド新書)あなたにもわかる相対性理論 (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:茂木 健一郎
販売元:PHP研究所
発売日:2009-09-19
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

相対性理論の科学的、数学的な解説のみではなく、アインシュタインがだけが何故相対性理論に到達し得たのか、その理由を10個の「アインシュタイン力」として考察する。アインシュタインが生きた当時の社会的背景や、科学の位置付けなどを踏まえ、相対性理論の何がどう凄いのかを解説している。

光の速さが有限でかつ一定であることから、時間や長さの新しい概念を導き出した特殊相対性理論と、それを慣性系だけではなく加速度のある系の中での物理法則を論じた一般相対性理論について、世の中ではあたかも難解な物事の代表格のように扱われる事も多いが、本書では「あなたにもわかる」の名の通り、非常に分かり易い解説が試みられている。小難しい前提知識無しに読み進めることができる。

「詩人が短い言葉で世界を表現するように、数式も世界の法則をごく短く表現できる。」これがアインシュタインが志向し続けてきたことだが、相対論と量子論を同一の数式体型上で扱う、統一場の理論は完成させることができなかった。現在でも量子力学を学ぶ上では、まず人間の能力ではおよそ認識出来ないことを前提に理論を受け入れなければならない。彼がもし統一場の理論を完成させていれば、人間の見る世界の見え方は随分と変わっていただろうと予測できる反面、世界の見え方を変えるきっかけは、相当の難産の末に生まれるものなのだと驚愕させられる。