人は死ぬから生きられる―脳科学者と禅僧の問答 (新潮新書)人は死ぬから生きられる―脳科学者と禅僧の問答 (新潮新書)
著者:茂木 健一郎
販売元:新潮社
発売日:2009-04
おすすめ度:4.5
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解が不能である問題、オープンエンドな問題への適応戦略とはいかにあるべきか。

意識の問題や心脳問題などをひっくるめて、人間が人間である理由はオープンエンドである。

何が解決なのか答えが出ないと腹をくくった上で、それでもなお賭ける覚悟が出来るかどうかだ。分かったフリをしたり、自分の知識の範囲内の概念に押し込めてしまうようでは考えが浅い。

アウトサイダーの脳科学者と、アウトサイダーの禅僧の対談は刺激的だったに違いない。仏教ではこのような問題を「苦」と言い、脳科学者はそれに向き合うことこそが「快楽」だと言う。仏教で言う「無情」と「業」という対になる概念は、脳科学では「偶有性」と「因果律」と表現される。「人はいかにして人であるか」という同一の問題に対する言語はここまで変わるものなのか。この対談自体が言語化してしまう危険性を孕んだ、スリリングなものだっただろうと想像できる。

このわけのわからない世界全体に向き合うとき、如何にして目的地を設計するのか。どのような方便を立ち上げるべきなのか。少なくとも、常に疑い続ける姿勢を持ち続けなければならないことだけは確実だ。安易な思考停止に陥って、大きな概念をつかみ損ねないためにも。