Googleの正体 (マイコミ新書)Googleの正体 (マイコミ新書)
著者:牧野 武文
販売元:毎日コミュニケーションズ
発売日:2010-01-23
おすすめ度:4.5
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まず本書から読み取るべきことは、世間で言われるような、ChromeOS対Windows、Android対iPhoneといった安直な対立構図は誤った認識であるということだ。

Googleも営利企業である以上、当然営利活動を行っている。いわゆる常識的な枠組みで考えられる営利活動とちょっと毛色が違うだけの話だ。

個人向けに徹底的に無料のサービスを提供し、参入した市場で価格破壊を起こし続ける様は、確かに目的が分かりづらい側面がある。検索連動広告で稼いだカネを原資に、あらゆる市場を破壊し尽くしていくようにも見える。Googleにとっての営利活動は何か、Googleはどうやって金儲けをしているのか。そのシンプルな回答の一つが、ChromeOSやAndroidの開発と無償提供にある。

Googleの収益の大半は検索連動広告の収入だと言う。何かしらの検索した単語に紐尽く広告を表示し、それをクリックしてもらうことで収益を上げる。つまり、地球上の人々がインターネットに触れる機会を可能な限り増やし、検索の頻度と「質」を上げること。これがそのまま連動広告の収益増に直結する。WindowsやiPhoneを駆逐する事が目的ではなく、共存すること。Appleに競合したい他社には力を与え、インターネットに接続するデバイスを市場に潤沢に放出する。消費者には選択肢を与え、より多く自社の検索エンジンを使って貰う機会を創出する。これが「検索されてナンボ」の、Googleの営利活動だ。

そしてもう一点、我々日本人が読み取るべきことは、Googleの営利活動が招く国際的な情報格差是正の結末だ。Googleの究極の目標が、あまねく世界中すべての人々に対するインターネットと検索インフラの提供にあるならば、地球上すべての地域で平等に、世界中のあらゆる情報に手が届く事になる。

急激に情報格差が是正される一方で、経済格差の是正もそれに引きずられて行くはずである。同じ知的スキルを持った人間が二人いれば、当然組織は賃金が安い方を雇用する。地球規模で同一スキルの同一賃金化が起こる。日本円の賃金体系と発展途上国の賃金体系の違い、地域ごとの経済格差が埋まってゆく。単純に日本は給料が安くなり途上国は給料が高くなると考えれば良い。俗に言うグローバル化だ。

途上国に暮らし、「学校を作ってくれ」と懇願する知的渇望状態の子供たちにインターネットの自由を与えたらどうなるだろうか。貧しい暮らしを強いられた、一攫千金を夢見る彼らに、我々は知的技能で勝ち目があるだろうか。これから数年後に日本人が戦わなければならない相手は、日本の同業他社ではない。まさに水を得た魚である、途上国の子供達だ。Googleはそういう社会を作ろうとしている。

革命はエスタブリッシュメントが市民に滅ぼされる。IT革命で滅ぼされるのは、少なくとも日本の知的労働者の大半だろう。我々はIT革命を迎え撃つ立場にある。そんなことを再認識させられる一冊だった。