安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
著者:山岸 俊男
中央公論新社(1999-06)
おすすめ度:4.0
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物事を理解する上で、その成り立ちや論理的根拠を知ることは避けて通れない。そういう意味で、日本特有の文化や今後の指針を理解するために大きな道筋を与えてくれる一冊だ。

まず、「安心」と「信頼」の定義から始まる。似たような意味合いで使ってしまいがちなこれらの言葉だが、そこに「社会的不確実性」という視点を加えると、明確に異なる概念となる。社会的不確実性とは読んで字のごとく、人間関係において不確実な要素が存在する状況のことだ。

信頼は、社会的不確実性が存在しているにもかかわらず、相手の(自分に対する感情までも含めた意味での)人間性ゆえに、相手が自分に対してひどい行動はとらないだろうと考えることです。これに対して安心は、そもそもそのような社会的不確実性が存在していないと感じることを意味します。(p.22)

この定義から著者らの数々の社会的な実験を通じて、人間の社会的知性を検証し論考する。我々の常識的な見解とは逸脱した実験も数多くあり、それだけでも興味深いのだが、それら様々な実験結果を論考する課程も面白い。研究のあるべき姿を垣間見ることが出来る。

著者らの一連の研究結果は、日本文化の来し方行く末に関する論拠と、今後日本人が身につけるべき知性を明らかにする。つまり、不確実性を引き受ける知性を身につけ、現代の崩壊した安心社会の代わりに、信頼社会を築いていく必要性があるということだ。

不確実性に対してどういった適応戦略をとるかは、人間の意識の問題だ。経済的な安心や雇用の安心が失われつつある今の状況を嘆いていても何も状況は変わらない。日本のグローバル化や世界のフラット化という文脈においても、これからも安心崩壊は進んでいくことは間違いないだろう。数々の大きな不確実性が襲ってくるのだ。そんな中で我々が取るべき態度は信頼に基づいたもので無ければならない。これからの時代をより良く生きるためのヒントを見つけることができるだろう。